前回のコラムでは「燃焼」を科学の観点からみてみました。
では今回は「火」が消える状態、「消火」を科学の観点から見てみましょう。
・水をかけるとなぜ消える?
前回のコラムで「燃焼」するためには、「燃えるモノ」、「酸素の供給」、「熱源(点火源)」の3つの要素が必要とお話しました。
火を消すためにはこれら3つの要素のうち、どれかを断てば良いということになります。
火を消すために、一番よく使われている「水をかける」方法は、熱源を断つことで火を消す方法です。水は、それが気化して水蒸気になる過程で、非常に多くの熱を奪い、その結果として火が存在できなくなるのです。また、燃えるモノが大量の水で覆われると、大気との接触が遮断されて酸素の供給が止まり、それも消火につながります。
・炭火を消すために考え出されたもの
また、燃えている炭を「消し壺」に入れてフタをして消す消火法は、酸素の供給を絶つ消火法です。燃えるモノと酸素との(熱と光を伴った)急激な結合が「燃焼」、すなわち「火」ですから、燃えるモノと結合する酸素が無いと、火は存在することができません。水をかける消火法は、熱を奪う以外に、水によって燃えるモノの表面を覆って、酸素との結合を止めるという2つの働きをするという意味で、優れた手法であるといえます。
・ロウソクの火が吹くと消えるわけ
ガスコンロなどで、ごく当たり前に使われている「ガスを止めて火を消す」消火法は、燃えるモノを断つ消火法です。ロウソクの火は、口で吹いて消しますが、これも、熱で気化したロウという「燃えるモノ」を吹き飛ばす消火法にあたります。
ただし、火を吹くことによる消火法は、一方で、火に新たな酸素を供給し、かえって火を大きくしてしまうことにもつながるため、注意する必要があります。
・火を消す方法を常に意識しよう
私たち人類にとって火は、暖を取る、夜の灯り、食材の加熱調理、など、生活するうえで欠かせません。人はどんなに気をつけてもミスをゼロにすることはできません。そのため、火を使い続けてきた人類の歴史は、同時に「火災」にさいなまれ続けてきた歴史でもあります。
これからも、たゆまぬ努力によって火災の発生頻度は下がり続けることでしょう。しかし、人類が火を使い続けるかぎり、火災のリスクを完全にゼロにすることはできません。私たちは、このことを念頭におき、火を使うたびにそのリスクを意識し、万が一の際にはすぐに対応できるようにしておく必要があるのではないでしょうか。
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